生前の相続税対策
相続税対策には、大きく2つの観点があります。
(ア)財産そのものを減らす
(イ)財産を組み替えて評価額を下げる
①財産そのものを減らす方法
財産そのものを減らす方法としては、例えば生前贈与があります。相続前に財産を贈与によって減らしておくことで、相続税を減らすことができます。早くから計画的に贈与を行うことが重要になります。教育資金贈与・子育て結婚資金贈与は、この生前贈与の特例となります。
②評価額を減らす方法
相続税において現金や預金は、その金額がほぼそのまま相続税の評価額となりますが、不動産や非上場株式などについては、そのままでは金額が分からないため、財産評価基本通達などによって評価することになります。不動産を相続税申告用に評価すると、通常、時価よりも低くなります。不動産を購入することにより、時価ベースでの財産総額を変えずに相続税の評価額を下げることができます。
また、相続発生時に受け取る生命保険金には、「相続人の人数×500万円」の非課税枠があります。現金を生命保険に変えておくことで、この非課税枠を利用することができます。
相続発生後の相続税対策
①小規模宅地等の特例を活用する
例えばお父様名義の自宅に家族で住んでいて、お父様にご相続が発生した場合、その自宅を相続税の納税のために売却すると、残された家族は住む場所に困ってしまいます。そのため相続税では、一定の要件のもと、自宅は他の不動産より評価額を低くする特例があります。これが小規模宅地の特例です。
小規模宅地の特例には、自宅以外にも貸家を対象としたものや、事業用宅地を対象としたものなどがあります。
②広大地
一定規模以上の土地で、土地の有効活用を考えた時に戸建て分譲が適しており、土地の形状から区画割りによって道路を新設する必要があり、そのために潰れ地が生じるような土地を広大地といいます。広大地の要件を満たせば、通常より40%強、最大で65%も土地の評価額を下げることができます。
③納税資金を考えた分割を行う
相続税の申告期限は原則として相続発生から10カ月ですが、相続税もその期限までに納める必要があります。相続財産が金融資産であれば、そこから納税できますが不動産しか相続しなかった場合、納税資金を調達する必要があります。不動産等で納税する物納という制度もありますが、要件があるため、事前に検討しておくことが重要です。